<金口木舌>泡盛の裾野広がる味わい


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 原料米を洗って水に浸した後に蒸す。そして黒麹(くろこうじ)菌の種付けをして米麹にする。水と酵母を加え、もろみにして2週間ほど。アルコール発酵させて、蒸留すると泡盛になる

▼シンプルな製造工程に見えて実は奥深い。崎山酒造廠(しょう)(金武町)に就職して4年目の津波志織さん(24)=読谷村=は、酒の醸造を担う杜氏(とうじ)の中で若手の一人。「原材料はほぼ同じだが、酒造所ごとに味が違うのが魅力」と言う
▼各酒造所は製造工程の随所で手間をかけて独自の味わいを醸し出す。腕の見せどころでもある。米を水に浸す段階からオリジナルの製法があり、味わいに違いが出る
▼例えば、黒麹菌に限らず、酵母も泡盛の風味づくりの鍵を握る。花酵母、黒糖酵母、マンゴー果実酵母などがある。県内の多くの酒造所で使用されているのは101号酵母と呼ばれる。これを親株にして、新しい酵母の研究も進んだ
▼うるま市のバイオジェット(塚原正俊社長)と琉球大学、奈良先端科学技術大学院大学などが改良研究して、101H酵母ができた。香り成分を引き立たせ、風味の幅を広げた。塚原さんは「日本酒のようにさらに酵母の選択肢を増やしたい」と言う
▼原材料の進化に加えて、仕込みの腕に若い力と知恵が相まって、さらに味わいの裾野も広がろう。「よりおいしい泡盛を追求したい」との若手杜氏の懸ける思いに胸も躍る。