<金口木舌>日本版トランプ氏へ


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 米国のテレビドラマ「スキャンダル 託された秘密」は、ホワイトハウスが舞台。アフリカ系女性弁護士の主人公が大統領や、その周囲で発生するトラブルをあらゆる手段で解決していく

▼登場人物の中に、石油会社の大富豪がいる。選挙資金を提供する一方で、支援する大統領の弱みを握り、自らに利益を誘導するという設定だ
▼現実社会では大富豪自ら大統領選挙に出馬し勝利した。当初、泡沫(ほうまつ)候補と目されたトランプ氏は富だけでなく、最高権力者の座も手に入れた。「事実は“ドラマ”よりも奇なり」である
▼トランプ氏の勝利宣言のステージには、白人が多く並んだ。米国ではテレビや映画などで、多様な人種を起用する傾向にある。ドラマ以上に選挙はあらゆる層の支持が必要だ。ステージ上の人種の偏りは、今後の政権運営を示唆しているようだった
▼「偉大なアメリカを再び」-。このキャッチフレーズが、国民の共感を得て、トランプ氏の勝利につながった。根底にあるのは白人層の貧困問題と閉塞(へいそく)感だ
▼日本でも貧困問題は表面化している。加えて表向きは障がい者や弱者に対する人権意識は保たれていても、それに対峙(たいじ)する人たちは存在する。相模原殺傷事件や沖縄担当相の「土人発言」への見解を見ると、選挙運動で蔑視・差別発言を連発したようなトランプ氏の日本版誕生を警戒する必要がある。