<金口木舌>職場で理解を


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 病院で診断を受けたその日のブログに、こうつづった。「車の中で泣きました。やっぱり。悔しい。けれどこれが現実…」。大城勝史さん(42)=豊見城市=は昨年4月に若年性認知症と告げられた

▼症状におびえ、該当しない項目に一縷(る)の望みをつないできた。そんな希望が打ち砕かれた時、漠然とした不安感と恐怖に襲われた。記憶は1日持つか、持たないか
▼「スイッチが切られたようにふっと消えてしまうこともある。消しゴムでゆっくり消されていく感覚もある」。記憶が残らないため、家から一歩出れば、いつもと違う世界が広がる。出退勤は日々「旅行」だ
▼自力で解決できないことに、もどかしさもあった。病気に向き合うようになったのは家族の支え、そして職場で理解が浸透したのがきっかけだ
▼常に持ち歩くファイルに、こんな言葉を手書きしている。「『歩』という字は/少し止まると書く/無理して急がなくていい/勇気をもって少し止まってみることも必要/ゆっくり自分のペースで進む」
▼64歳未満の若年性認知症の理解は進んでいない。「苦手なことは多いが、支えがあれば働くこともできる。偏見を少しでもなくしたい」。認知症は加齢とともに、身近になる病気でもある。学校、職場で理解を広げたい。病を公表した大城さんの勇気ある行動だけに委ねるわけにはいかない。