<金口木舌>「重い」「長い」沖縄


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 自由な風刺と諧謔(かいぎゃく)が川柳の身上だと思っていたが、やってはいけないタブーもある。川柳のことを素材にして詠む「楽屋吟」や、動詞「する」の連用形「し」で終わる「し止め」が該当する

▼「着流しとげた履き、サンダル履きで乗り込んだらひっぱたかれる」とは、川柳シンポジウムのため先月来県した全日本川柳協会理事の島田駱舟さんの言。20ほどのタブーがあるとのこと
▼気楽に見えて規則だらけなのが川柳の世界らしい。差別や誹謗(ひぼう)中傷の類いはもちろんご法度だ。「人を傷つける言葉を用いてはならない。タブー以前のマナーの問題だ」と島田さんは諫(いさ)める
▼法に基づき公務を遂行するはずの機動隊員が吐いたおきて破りの言葉を「差別であると断じることは到底できない」と鶴保庸介沖縄担当相は抗弁する。こちらはマナー以前の人権問題だが、持論を引っ込める気はなさそうだ
▼高支持率を保つ安倍政権の大臣ならば、相手が沖縄なら多少の暴言や軽口は構わないと考えているのであれば、とんだ勘違いだ。それこそ横っ面をはたかれよう
▼島田さんの沖縄初印象は「重い」「長い」であった。20年前、米軍の大型輸送機と基地のフェンスに驚き、沖縄に申し訳ないという思いを抱いた。鶴保沖縄相もフェンス沿いを歩き「重い」「長い」を実感してはどうか。大臣の資質を自らに問う機会にもなろう。