<金口木舌>嫌がらせではない弁当


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 手作り弁当を持参する人を見るたびにうらやましく思う。自分で作った人に会うと、思わず「私の分も作っていただけませんか」とお願いしたくなる

▼市販の弁当にも、作る人の「おいしく食べてほしい」という気持ちがこめられているだろう。一方、手作り弁当は決まった人が対象になるため、その思いをより強く感じる。栄養を考えて品数も多く、彩り豊かに見える。量も多過ぎず、少な過ぎず
▼昨年、「今日も嫌がらせ弁当」という弁当本がヒットした。44歳のシングルマザーが高校生の娘に3年間持たせたのが「嫌がらせ弁当」。反抗期の娘への愚痴やメッセージなどが食材で描かれる。娘にとっては友達とのコミュニケーションにも役立ったのではないか
▼先日、本島北部の高校生が弁当作りの腕を競う「やんばる弁当甲子園」が開かれた。栄養のバランス、身近な食材の使用、塩分や油の軽減-などについて審査され、名護高校3年の浦崎恵瑠(える)さんが2連覇した
▼驚いたのは浦崎さんも含め、出場者の多くが料理を普段しないこと。裏を返せば作り慣れていなくても、体によくおいしい弁当を作ることができるということだ。入賞者の「母親の苦労が分かった」という言葉が心に響いた
▼「嫌がらせ弁当」を読むと、親子の絆の深さを感じる。弁当は家族や友人とのコミュニケーションを深め、生活を潤す活力源にもなる。