<金口木舌>期待も朽ちかねない


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 2009年に下野した自民党が政権奪還へ向け、どんな戦略を巡らせたか。小口日出彦さんの著書「情報参謀」に詳しい。人々が敏感に反応し、政権の急所となる情報を膨大なデータから探る

▼情報を二つに仕分けた分析が興味深い。「一発屋型」は、瞬間的に関心は高まるが急速にしぼむ。「ロングヒット型」は目立たなくとも徐々に浸透し、多くの人の話題になっていく情報を指す
▼ロングヒット型に該当したのが米軍普天間飛行場の移設問題である。「最低でも県外」と公約した当時の鳩山由紀夫首相の手詰まりも重なり、急所情報となった。著者は野党自民党へ進言する。「問題への関心が枯れにくい部分へ食いつくべきです。つまり、普天間です」
▼民主党の政権担当能力を喪失させる印象戦略は成功したかに見え、自民党は後に政権復帰する。だが、問題は今も解決しない。それは司法も同様である
▼住民3417人が米軍機の飛行差し止めなどを求めた17日の第2次普天間爆音訴訟の判決も解決策を示さなかった。爆音の違法性を認めて賠償を命じても、飛行差し止めは認めない。違法なのに救済できない司法とは。素朴な疑問にも答えに窮する
▼問題に向き合わぬ政治に加え、ちぐはぐな司法に落胆は深まる一方だ。普天間返還合意から20年。長期間放置され、もはや人々の期待はうせ、朽ちかねない状況である。