<金口木舌>「輸入または国産」の愚


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 野菜の高値が続く中、少しでも安い物はないかと、道の駅やファーマーズマーケットをのぞく。産直市場がありがたいのは、ラベルに生産者の名前や産地名が記されている点だ。時には顔写真入りもある

▼農家の方が取れたての野菜を並べている光景もよく見掛ける。たくましい太い指からは苦労が伝わり、感謝の念も増す。誰がどこで作っているのか「顔の見える」食べ物は大きな安心感を生む
▼国内で作られる全ての加工食品に原料の原産地表示を義務付けようと、消費者庁と農林水産省が動いている。環太平洋連携協定(TPP)で外国産が増えるのを見越し、消費者の不安を解消するのが狙いだ。6月に閣議決定された。来年夏にも公布を目指す
▼一見、歓迎したくなるものの、例外の多さが問題になっている。原材料の原産国を表示するのが原則だが、3カ国以上になると「輸入または国産」でも許される。これなら「地球産」と同じだ
▼原材料は季節や相場で仕入れ先が変わることもある。その都度、包装を変えると業者のコストが増え、価格に跳ね返るからというのが理由らしい。消費者置き去りで、骨抜きもいいところだ
▼見掛け倒しやごまかしを表すことわざに「羊頭狗(く)肉(にく)」や「玉を衒(てら)いて石を売る」がある。このままだと「輸入または国産」も新ことわざになりかねない。顔の見えない表示は意味がない。