<金口木舌>高齢者ドライバー


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今までできていたことが、身体の衰えとともにできなくなってしまう焦燥感は、当事者にしか分からないのかもしれない。新聞の文字が見えづらい、相手の声が聞き取りづらいなどいろいろある

▼中でも運転に自信をなくすことは当人にとって大きなダメージのようだ。当方の父も車を手放すことに相当抵抗した。しかし物損事故がきっかけで、諦めてもらった
▼復帰前の右側通行の時代に免許を取得した父にとって、運転への思い入れは人一倍強いように感じた。運転はやめても免許証は返納せず、身分証明としてずっと手元に置いていた
▼最近、高齢運転者による痛ましい事故の報道が目に付く。身体能力は人それぞれなので「何歳以上は免許停止」と、ラインを引くべきではない。ましてや車社会の沖縄で、免許を取り上げることは引きこもりを助長しかねない
▼人工知能を搭載した自動運転車両や、障害物の手前で停止する自動ブレーキシステムを備えた車両がいずれ普及するだろう。しかし、誰にも手が届くとは限らない
▼「車の鍵を隠した」「事故覚悟で保険を無制限に見直した」-。以前取材した高齢者の運転に悩む家族の声だ。免許を手放すことは容易ではない。第三者の関わり、公共交通機関の無料化など複層的な支援が必要だ。「明日はわが身」で問題に向き合いたい。