<金口木舌>命は「みんな一緒」


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 生まれつきにせよ、病気や老いに起因するにせよ、心身の障がいは身近にある。宜野湾市の障がい福祉サービス事業所「蒼生学園」と長田区民との交流会は、お互いを理解する場として20年以上続いている

▼実行委員長の富濱宗俊長田区自治会長は「蒼生学園があることは住民にとっていいこと。他者を理解する教育の場だ」と言う。歌を披露したり出店を開いたりと、年1回ではあるが互いを知る機会として、すっかり定着している
▼神奈川県相模原市の知的障がい者施設で殺傷事件が発生して、4カ月が過ぎた。県の第三者検証委員会がまとめた報告書は、施設側と県が危機情報を「共有していれば、防げた可能性もある」とする
▼しかし危機情報とは別に、みんなで考えたいことがある。雑誌「現代思想」10月号に事件の論考を寄せた二松学舎大学教員の荒井裕樹さん(障がい者文化論)は「障がい者が身近にいない社会では、障がい者への想像力が希薄になる」としている
▼事件を踏まえ、蒼生学園の砂川好彦園長も言う。「(障がい者のことを)知らないから『いなくていい』と思うのではないか。人の命はみんな一緒だ」
▼互いの関係を築くことで事件を防ぐことはできないか。身近な障がい者について知らないために、失ったものはないだろうか。身近な命が「みんな一緒」と思える機会を増やしていきたい。