<金口木舌>性暴力被害者への偏見


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前方で一時停止した車が、当方の車に後進してきて衝突する事故に遭った。こちらは停止していたので過失は前の車にあったが、警察を呼んだり保険の手続きをしたりでその日1日、どんよりとした気分になった

▼思いがけない事故に遭った時、「なぜあの道を選んでしまったのだろう」と自分を責めてしまう。ただ誰かに話して共感を得て慰めてもらえれば、少し心は癒やされる
▼交通事故なら話しやすいが、これが性暴力となるとそうはいかない。誰にでも話せる内容ではない。思い切って打ち明けたとしても「どんな格好していたの」と、被害者にもかかわらず落ち度を問われることがある
▼最近、県外の大学で学生が女性を酔わせた上で暴行するという事件が相次いで発覚した。一般的に性暴力事件の通報は氷山の一角にすぎない。被害者は届け出たくても、声を上げられずにいる
▼県が開設する性暴力被害の相談窓口「ワンストップ支援センター」に、昨年2月から今年10月までに133人から相談があった。そのうち、警察に届け出たのは39人と約3割、未届けが約5割、不明が約2割だ
▼被害者に落ち度は一切ない。女性を「モノ」扱いする加害者のゆがんだ性意識こそ、問われるべきだ。被害者へ偏見の目を向ける社会が、被害者の「沈黙」を助長する。「加害者が悪い」。そんな当たり前の意識が広がってほしい。