<金口木舌>タブレットと農業


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 タブレット端末を手にしたまま、目線もほぼそこ。配布された資料には文字がぎっしり詰まっている。ハイテクなイメージと違って、テーマは「牛飼い」だ

▼名護市喜瀬で牧場「ファームコネクション」を営む前川寿史(としふみ)さん(31)が11月28日、母校の県立農業大学校で講演した。話す内容は資料に書かれている。「話だけしても覚えてもらえない。興味あるところは読み返してほしい」。柔軟さと、農業に挑戦して、という後輩への熱い思いを感じた
▼前川さんは祖父から牧場を継いだ。23歳で就農した2008年当時、飼われていたのはやせた母牛5頭だけだった。10年に牧場を立て直し、5年で母牛25頭を育てる牧場に発展させる
▼新人がベテランの牛飼いと同じ土俵でどう勝負したらいいのか。相手のことを知ることから始めた。勘は鋭いが、経営に必要な数字の計算や記録が苦手。ベテランと同じ方法では技術の差は縮まらない
▼前川さんはタブレットやパソコンを使い、データ管理を徹底した。フェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)を活用し、全国各地の同業者から情報を収集している
▼沖縄の農業も他県と同様、担い手不足など深刻な問題を抱える。今だからできる挑戦の仕方がある。タブレットを手に、農業への情熱を語る前川さん。後に続きたいと感じた後輩は多いに違いない。