<金口木舌>働き方改革は労使自治から


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 「人生と向き合うチャンスをもらいました」。多くの社員からそんな言葉が聞かれたという。家具や生活用品の製造販売大手イケア・ジャパンが実施した人事制度改革の結果である

▼社員の7割近くを占めた非正規労働者を正社員化し、同一労働同一賃金を実施、多様な働き方も認めた。人材の確保だけでなく、潜在的な能力や経験を生かす狙いがある。「人を大事にする」が社是だ
▼非正規雇用は世界規模で広がっている。国際労働機関(ILO)によると、2015年は労働者の37%を占め、世界的格差問題の温床となっている。正規と非正規の賃金格差は、欧州は10対8だが、日本は10対6と大きい
▼沖縄の非正規の割合は44・5%で全国の38・2%を上回る。その割合が高いと、子どもの貧困の誘因にもなる。政府は来年の通常国会で働き方改革の関連法案を提出する予定だが、改善はずっと先の見通しだ
▼日本では非正規が増えても、労働条件の改善はまだ途上だ。非正規の声を反映させる仕組みも乏しい。その中で政府の対策や他の企業の取り組みに先駆けたイケアの改革は手本になる
▼欧州では労使が職務を吟味し、労働協約で基本給を決める「労使自治」が機能しているという。日本の中小企業の中には非正規の正規化が経営上、厳しい社もある。各企業に合った労使自治で改善を図ることが大切だ。