<金口木舌>勇気と希望を受け取る


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 北京パラリンピック男子車いすマラソン銀メダリストの上与那原寛和選手(45)は2020年東京大会の頃は50歳目前。だが新進気鋭の選手も増える中、「まだまだ若い人に席は譲れない」と挑戦し続ける

▼00年に事故で頸椎(けいつい)を損傷した上与那原さんは、02年から車いすレースを始めた。初出場が「ぎのわん車いすマラソン大会」だった。銀メダリストを輩出した大会も28回目を数えた
▼若手有望選手、常連と多くの人が今年も声援を背に力走した。父と3・5キロコースに挑戦したのは読谷小学校5年の島本青波君。13年から出場し大会を機に可能性を切り開いてきた。「中学に入ったら卓球を頑張りたい」と力強い
▼國吉真奈美さん(23)=浦添市=は3・5キロコースで最後にゴールイン。途中でコースを外れ、本来の力を発揮できなかったが、見守った普天間高校の野球部員たちが歌で加勢した。「みんなでゴールが迎えられ良かった」。完走を喜ぶ輪が広がった
▼元ランナーの与古田健さん(65)=うるま市=は悲願の初出場を果たした。35歳の時、事故に遭い、厳しいリハビリを克服した。「普通のマラソンよりずっときつい」。レース復帰に笑顔がはじけた
▼上与那原選手は言う。「つらい時もあるが、半々で楽しい時もないと」。力走した出場者の輝く笑顔から、応援する人は勇気や希望をしっかり受け取った。