<金口木舌>逃げ恥学ぶ「愛情の搾取」の意味


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 「逃げ恥」の愛称まで付いた人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が終わった。主人公の女性が、家事代行の給与をもらいながら、恋愛経験ゼロの男性と「契約結婚」をするラブコメディー

▼最終的に2人は引かれ合うのだが、男性のプロポーズの言葉は「結婚すれば雇用契約は必要なくなり、支払っていた給与を貯蓄に回せます」。きっかけがリストラなのだから身もふたもない
▼当然女性は反発し「結婚すれば私に給料を払わずにただで使えるから合理的。それは愛情の搾取です」と一蹴する。このセリフには深い意味がある
▼家事・育児・介護という「労働」には通常、対価は支払われない。「愛」という名の下に、主婦・共働きにかかわらず、女性がやって当然と見なされる風潮が強い。家事の負担で、パートや派遣社員を選択せざるを得ない女性もいる
▼ジャーナリストの竹信三恵子さんは著書「家事労働ハラスメント」で「会社を辞めざるを得ず、再就職も難しく女性が経済的に自立できないのは家事労働を考えに入れない政策こそ原因」と指摘する。女性の無償労働を前提とした日本企業の働かせ方に一石を投じる
▼ドラマは1人でも2人でも生きていくのは面倒くさい。なら2人で生きていこう、というハッピーエンド。「面倒くささ」の解消が少子化対策の鍵かもしれない。そんなヒントをドラマから得た気がする。