<金口木舌>分かり合う機会に


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 月日は駿馬(しゅんめ)が駆けるようにあっという間に過ぎ去っていく。沖縄の言葉に「月(チチ)ぬ 走(ハ)いや 馬(ンマ)ぬ走い」とある。時を大切に、ということだ

▼ブラジルから来て北中城村で3カ月を過ごした大工廻ルーカス・ケンゾさん(27)は、そんな言葉を引用して研修を振り返った。自国で修行を続ける琉球舞踊を本場でみっちり学んだ。充実の日々を惜しみ、修了式で語った。「沖縄は私のふるさと。帰る場所」
▼1992年から始まった北中城村の海外移住者子弟研修は25回を数える。今回も3人が来沖した。日本語を学び、地域伝統を知り、村内外の文化施設も巡る
▼ペルーからの大城金城アルド・ラウルさん(29)は、糸満市摩文仁の平和の礎などを訪れた。沖縄戦に思いを寄せ「祖先の苦しみを知り、もう二度と戦争が起きないようにするのが私たちの義務」と決意した
▼アルゼンチンからの安里ナオミさん(24)は、来沖前まで「私は100%アルゼンチン人でした」と言う。研修を経て「今、私は北中城の人。ルーツは北中城」と話す。祖先が生きる糧ともした文化に触れ、新たな思いが湧いた
▼電子機器がいかに発達しようとも、じかに人が接し、分かり合う機会を大切にしたい。何か起これば、大丈夫だろうか、困っていないだろうかと思い合う。何物にも替え難い、支え合いの輪が村内、南米にまた広がった。