<金口木舌>いかにつなぐか


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 「家紋は」と聞かれ「(門は)ブロック」と答えたといわれるボクシング元世界王者の具志堅用高さん。ユーモアだけでなく、邪気のなさ、飾りっ気のなさが広く県民に親しまれるところなのだろう

▼門構えと呼ぶべき造り自体が少なくなっている。江戸の時代、家々の門口で披露される芸を「門付け」と呼び、祝いを運ぶ神に重ねられた。沖縄にも伝わり、宜野座村や沖縄市泡瀬に「京太郎(チョンダラー)」として残る
▼泡瀬の踊りは木製の馬を抱えた「馬舞者(ウマメーサー)」、「鳥刺し舞(トゥイサシメー)」などで構成。太鼓の独特のリズムに乗った舞いに引き込まれる。1906(明治39)年に村の祝いで初演された。昨年は110年の節目で、保存会はこの春、記念公演を予定する
▼泡瀬京太郎を含め、都道府県が指定する無形民俗文化財の伝統行事は全国に1651件。うち60件は担い手減少などを理由に休止・廃止されているという。沖縄は含まれていないと聞き、安心する向きも多かろう
▼だが復興期成会など、地元に根差した基盤を誇る泡瀬でも避けられない課題となっている。泡瀬京太郎保存会の喜屋武勝三会長によると演舞者の確保に頭を悩ませている。他地域の現状も推して知るべしだろう
▼「地域に豊かな伝統文化の残る沖縄」はイメージでしかなくなるかもしれない。それぞれの地域任せではない保存・継承を考える時期だ。