<金口木舌>フーカキサバニ


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 20年前、帆船で中国に渡るイベントの同行取材で忘れられない光景がある。イルカの群れが帆船と並んで泳いでいた。アーチを描いてジャンプする姿は、操船に疲れた乗組員を励ましているように見えた

▼先日、名護市大浦湾で船に乗った時は、海上でキラキラと光る群れを見た。ミジュンとみられる小さな魚が海上を跳びはね、太陽に照らされて輝いていた。生き物との宝物のような出合いも海の魅力だ
▼沖縄の伝統的なくり舟「帆かけサバニ」(フーカキサバニ)で世界の海を巡った先人は、どのような光景を見ただろう。名護市内を拠点に活動する愛好家の団体「フーカキサバニ」が第7回地域再生大賞の優秀賞に選ばれた
▼21世紀の日常にフーカキサバニの文化を取り戻そうというのが団体の目的だ。長距離を航海するサバニ旅の寄港先では操船技術を教える。サバニを地域活性化に生かす取り組みが評価された
▼レースなどを通して海やサバニに魅了された人々が集まり、輪が広がる。名護市の名護城公園せせらぎ広場での公開造船で、帆かけサバニを建造する長嶺誠さん(35)らもそうだ
▼メンバーは「集中しにくい環境だけど、実際にサバニを造る様子を見て魅力を知ってほしい」と力を込める。孫の代まで舟が残る造船技術と、乗組員全員が協力し合う素晴らしさを次代に継ぐ。地域の活力につなげたい。