<金口木舌>衣笠は何番?


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 身内の80代夫婦の会話に大笑いした。「衣笠は今、何番だ」と問う夫に、妻はあきれて「永久欠番だよ」と答えたそうだ。広島東洋カープの名選手、衣笠祥雄さんが引退して約29年になる

▼うそのような本当の話だ。夫は「鉄人衣笠」の勇姿を思い出し、打順を聞いた。困惑した妻の顔が目に浮かぶ。ちなみに衣笠さんの現役時代の背番号3は永久欠番だ
▼笑った後、はたと気が付いた。当方が熱心にプロ野球のテレビ中継を見ていたのは王貞治さんがホームランを量産した頃だ。それ以降は優勝争いは気になっても、選手個人への関心は薄かった
▼それでも沖縄出身選手の活躍はうれしかった。「巨人キラー」と呼ばれた安仁屋宗八さん、栽弘義監督率いる豊見城高校野球部からプロに進んだ赤嶺賢勇さん、石嶺和彦さんらだ。沖縄姓の監督は誇りだった。中日ドラゴンズで指揮を執った与那嶺要さんである
▼あの時代、少年期を送った人なら誰しも紙を丸めて作ったボールを握り、角材をバット代わりにして遊んだ経験があろう。プロ野球選手は憧れの的だった。その後輩たちが沖縄に集まった。春季キャンプは今が真っ盛りだ
▼もはや野球用語となった「快音」の響きは「カーン」だろうか。日頃の憂さを吹き飛ばしてくれそうだ。往年の選手の思い出をグラウンドで探すのもよい。今度の休日、球場へ行こう。