<金口木舌>先史時代土器研究の申し子


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 まさに先史時代土器研究の申し子だ。1969年の夏休み、浦添高校郷土史研究クラブの一員だった島袋春美さんは、浦添貝塚で市来(いちき)式土器に出合う。沖縄に外から持ち込まれた「移入土器」を初めて発見したのは高校生たちだった

▼島袋さんは沖縄国際大に進学し考古学を学ぶ。同期生が読谷村の渡具知東原(あがりばる)遺跡で見つけた土器片は、市来式より古い縄文前期の曽畑(そばた)式だった。その後、同遺跡の発掘に携わる
▼大学卒業後は県、浦添市、那覇市などで、ほぼ一貫して発掘調査を担当。近年は北谷町教育委員会で米軍キャンプ桑江の返還跡地の発掘に当たってきた
▼ここでも船元(ふなもと)系土器が初めて見つかるなどの成果が続いた。今年1月には、東北地方から来たとみられる県内初出土の大洞(おおほら)A式土器が、縄文人のダイナミックな交流を示す証拠として全国ニュースになった
▼郷土史研究クラブを指導した新田重清(じゅうせい)さんが東恩納寛惇賞を受賞し、先月の祝賀会に当時の部員が顔をそろえた。恩師を継ぎ研究者になった島袋さんは、重要な発見に恵まれたことを「ラッキーです」と話し、照れた
▼今月、北谷町教委の報告書完成を機に発掘現場の一線を「卒業」する。先史時代各期を代表する移入土器発見に10代から関わった研究者はまれだ。先史に関心を持つ中高生を増やすために島袋さんを活用しない手はない。