<金口木舌>ジュニアオーケストラの響き


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 記事でよく目にする表現がある。子どもの成長の話題だと大抵の大人は「目を細め」、優勝を奪い返した選手は「雪辱を果たした」ことになる。ほかに「力を込めた」「笑顔を見せた」「汗を拭った」などなど

▼決まり切った言い回しに「締めを工夫せよ」とは鬼デスクの言。突き返されて頭を抱えるが、いい表現は簡単には出てこない
▼北谷町の諸魂教会にあるパイプオルガンが設置から20年を経て初の大修理を終えた。試奏した演奏家の糸洲のぶ子さんは「パイプの音が踊り、輝きが戻った」と一言。プロだからこその表現だと感じた
▼今月あった沖縄市ジュニアオーケストラの演奏会。弦楽器を始めて1年半ほどの児童らだ。おぼつかなさを補う明るい響きは奏でる喜びだろうか。観客は体で拍子を取って聞き入った。これも表現が難しいが、わが町のオーケストラが少しずつ成長するのを慈しんでいるように映った
▼タクトを振るバイオリン奏者の高宮城徹夫さんは「近所の子の演奏で音楽をもっと身近に感じてほしい」と期待する。もっと気軽にクラシックを、との願いから実演家も活動を支える
▼結成36年の中城をはじめ名護、宮古、うるま、那覇などでジュニアオケが活動中だ。音を重ねて楽曲を鳴らすように楽団の交流が深まり、支援も広がってほしい。活動が活発になればより豊かに地域社会を彩るだろう。