<金口木舌>一旦緩急アレハ


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 作家の高橋源一郎さんが教育勅語の現代語訳をツイッターに投稿し、話題となっている。森友学園の騒ぎで議論を呼んでいるが、原文の意味は分かりにくい。そこで翻訳を試みた

▼現代語に置き替えただけではない。奇抜な表現で勅語の深意を説いた。冒頭の「朕惟(ちんおも)フニ」は「はい、天皇です。よろしく」という具合。学校で教育勅語を朗読した世代は面食らうだろう
▼教育勅語に道徳心や国家観を求める政治家もいる。稲田朋美防衛相が8日の国会で「親孝行や友達を大切にするといった核の部分は取り戻すべきだ」と答弁した。それでよいのか
▼ひめゆり学徒の引率教師だった仲宗根政善さんは1978年、教育勅語の精神を軍人に問われた戦前の体験を日記に書き留めている。軍人が求めた答えは「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スへシ」
▼現代人にはピンとこない。高橋訳なら「いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください」となる。稲田氏はどう読むだろう
▼衆参両院は48年、教育勅語廃止を決議した。主権在君と神話的国体観に基づく理念を持つ教育勅語は「基本的人権を損い、且(か)つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」と衆院決議は言い切る。敗戦直後の国会の決意と向き合ってはどうか。稲田氏に問いたい。