<金口木舌>夢を持ち踏み出す勇気


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 決勝も1回戦も夢破れた選手の悔しさは変わらない。「甲子園に出たかった」。高校球児にとっての憧れの舞台の大きさを、取材で目にした多くの涙が教えてくれた

▼89回の歴史を数える選抜大会で熱戦が繰り広げられている。沖縄代表はここ2年、九州で敗れ出場していない。同様に24府県が今回は地元を応援する機会がない。その中で球場でひときわ声援を受けたのが21世紀枠出場チームだろう
▼2001年から導入され、その価値を全国に知らしめたのが、その年に出場した宜野座だ。学童野球からの仲間たちが地域の絆を見せつけ、強豪を倒し4強入りした勇姿は、今も語り継がれている
▼21世紀枠の初戦突破率は3割程度で、実力差を指摘する声もある。今年も3校全てが敗れ、0-21の大敗もあった。しかし満員のアルプスを包んだ「よくやった」の声は、選手の今後の力になるはずだ
▼この試合の後、宜野座旋風を巻き起こした当時の主将で、現那覇商業監督の安富勇人さんに話を聞いた。「勝ち負けは大事だが全てではない。全国の声援を感じ、戦ったことは必ず財産になる」
▼自身も、選抜出場が夏の県制覇につながり、指導者の道をも切り開いたと言い切る。結果のみを追い求めず、夢に向かって踏み出す勇気を持つ。スポーツに限らず、学校生活のさまざまな場面が、人生を描くヒントになる。