<金口木舌>虫の賢さ


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 「モーレツ社員」で通じなければ「企業戦士」だとどうか。休みなしで、仕事に没頭。家族そっちのけの職場一筋。大概、そんなイメージだろう

▼コマーシャルで「モーレツ」の言葉が流行(はや)った1969年。当時の紙面で小欄は、よく学ぶ行政職員を「はやりのことばでいえば『モーレツ役人』」と持ち上げた。行政サービスが向上し、住民にとって「結構な存在」と記す
▼今はそう言ってはいられない。「モーレツ社員という考え方自体が否定される日本に」とは政府の働き方改革実行計画だ。規制に抜け穴との批判がある。「日本に」と取って付けるあたりもうさんくさいが、長時間労働を美徳とする価値観との決別ではある
▼「働くアリに幸せを」などの著作がある進化生物学者の長谷川英祐さんの指摘が示唆に富む。子育てするハチの一種を調べると、複数で育てた方が幼虫の生存率が増していた。協業すると子を多く残せるという「個の利益」を得る
▼「自分のためになるから働く」とは進化の原理からは当然らしい。逆に言うと全体益があっても個の利益が下がるなら「その行動は進化することはない」。「自己犠牲が進化することはない」とも
▼人間の世界に戻って4月。生活を見直す契機でもある。何か一つでも働き方に変化を付けてはどうか。経営者の対応だけでなく、働く側の意識改革も待ったなしだ。