<金口木舌>宝の言葉


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 娘が幼稚園児のころ、担任の先生から聞いた話。避難訓練で、万一、地震が起こった時の対処について説明した時、園児が口々に言ったそうだ。「先生、オオゴマダラのさなぎも一緒に連れて行くんだよね」

▼「いつの間に、こんな優しさが育っていたのかと思うと、うれしくて」。先生はこの話をする時、感極まって少し泣いてしまうのだという。子どもと接していると、感性の柔らかさにはっとすることがある
▼発想の意外性に驚かされることも多い。15年ほど前のある日、一緒に散歩していた当時3歳くらいの甥(おい)が言った。「ちっちゃい海の所から歩こうよ」。住宅街にいるのにどこに海があるのか、さっぱり分からなかった
▼話しているうちに、「ちっちゃい海」が水たまりを指しているのだと分かった。甥は当時、「水たまり」という言葉を知らず、自分の知っている語彙(ごい)を組み合わせて表現していたのだ
▼がちがちに固まった大人の頭では、到底思い付かないと思った。知らず知らずのうちに、枠にはまった考え方をしている自分に気付かされる。子どもから学ぶことは多いと、あらためて感じる
▼子育ては慌ただしい。だが毎日せわしく過ごしているうちに、子どもはぐんぐん成長する。きょうは「こどもの日」。ゆっくりわが子の話に耳を傾けてみよう。今だけの宝の言葉。聞き逃してはもったいない。