<金口木舌>〝穴〟に落ちない自覚を


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 草花の色が変わるこの季節は“心の移ろい”も気になる。俗にいう「五月病」の新人だけでなく、人事異動で新しい環境に適応できず、焦りや不安を抱く人は少なくないだろう

▼慣れない環境は大きなストレスを生む。社会人2年目の時、仕事のストレスから競馬にのめり込んでしまった男性についての記事を読んだ
▼男性は、平日は職場のパソコンで、休日は場外馬券売り場で給料をつぎ込んだ。負けを取り戻そうと、同僚にうそをついてまで金を借りた。会社から問い詰められ休職、ギャンブル依存症患者を支援するNPOの施設に入所した
▼政府はカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)導入に向け、ギャンブル依存症の対策強化に乗り出した。今夏をめどに対策を取りまとめる一方でIR実施法の今秋成立も目指す
▼「依存症対策がカジノ建設の言い訳になってはならない」。ギャンブル依存症の患者や家族の支援に取り組む団体(6都県8団体)がそんな思いで協議会を設立した。より効果的な支援が患者や家族に届くよう、連携して抜本策を訴えている
▼先の男性は仕事のストレスが依存症の引き金になった。ギャンブル依存症は、ストレスがまん延する今の社会では誰もが落ち得る落とし穴。カジノ施設の導入は国家が穴を掘るようなものだ。一人一人が穴に落ちない自覚を持つことが肝要だ。