<金口木舌>ストリートの名残


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 フォーク、ブルースシンガーのひがよしひろさんがコザの夜を歌った曲に「熱帯夜」がある。客を招く呼び込みの声が「らっしょ、らっしょ」と独特の節回しでサビに使われている

▼「いらっしゃい」の意味だと思ったが違った。CDを手に取ると歌詞は「FloorShow(フロアーショー)」となっている。ショーの始まりを告げる声がBC(ビジネスセンター)通りにこだまするさまだった
▼施政権が日本に返還された1972年5月15日。午前0時すぎのBC通りは、混乱を避けるためか、米兵らの客足は少なかったという。45年を経た15日未明、かつてのBC通りを歩いてみた
▼中央パークアベニューと名前を変えた通りの白い屋根の下で、近くで飲食店を経営する20代の男性に出会った。「アベニューの街並みが好きで出店を決めた」という。復帰前の雰囲気もあって、再び若者を引き付け始めている
▼店子(たなこ)らの組合名はかつての名残でセンター商店街振興組合。浜比嘉進理事長は「こだわりはない。『センター』もかつて新しくつけられたものだった」と話す。営む人や客のニーズに合わせ、街も変わることで活性化するとの思いがある
▼一方通行で親しまれた通りは、相互通行となる。復帰から50年となる5年後には、生まれ変わっているはずだ。通りは新たにどのような物語を紡ぎ出すだろうか。