<金口木舌>人権規約の理念


この記事を書いた人 琉球新報社

 大相撲夏場所は横綱白鵬の1年ぶりの優勝となったが、注目度はこちらに軍配が上がった。大関昇進を決めた高安関だ。おっとりとした表情で人気もうなぎ上りとなっている

▼その兄弟子の稀勢の里の昇進まで、モンゴル出身3力士が横綱を張ってきた大相撲で「まさか」と思う出来事があったのは、1場所前の春場所。モンゴル出身の大関照ノ富士に客席から「モンゴルに帰れ」とやじが飛んだとの報道があった
▼この時、大関は立ち合いの変化で勝利した。相手が大関復帰の懸かった琴奨菊であったこともあり、勝負態度を批判的に見る向きはあるだろう。日本相撲協会は「確認できなかった」としたが、事実であればファンとして残念に尽きる
▼こうした差別の問題に各種の競技団体が厳しく対処するのは当然のことだ。ファンからの信頼、国際的な評価に直結する。一方で、疑問符が付くのは日本政府の対応である
▼国連人権高等弁務官事務所は言論と表現の自由に関する特別報告者の報告書を公開した。沖縄の基地問題で政府が「過度な権力を行使している」と懸念を表明した
▼1979年のきょう、国会は国際人権規約の批准を承認した。規約は人種や出身などで差別されることがないことや、表現の自由の保障を定めている。規約の理念を現在に当てはめてみることは、互いを尊ぶ社会の実現につながるはずだ。