<金口木舌>戻ってくるな、渡り鳥

 「渡り鳥」は胸にじわりと染みる言葉である。どこからともなくやって来て、悲喜こもごものドラマを残して清々(すがすが)しく去っていく。そのせいだろうか、演歌や映画の世界にしっくり来る

▼歌手の水前寺清子さんの1964年のデビュー曲は「涙を抱いた渡り鳥」であった。心の傷を負い、一人旅を続ける女性を描いた星野哲郎さんの歌詞を水前寺さんはきっぷよく歌い、上昇気流に乗った
▼俳優の小林旭さんに「ギターを持った渡り鳥」など「渡り鳥シリーズ」がある。ギターと銃を持った主人公が全国を渡り歩き、悪玉を懲らしめるという筋書きだ。小林さんの当たり役である
▼何と言っても大スターは寅さんであろう。山田洋次監督「男はつらいよ」シリーズで渥美清さん演じる車寅次郎に、心優しい渡り鳥の原像を見る。80年のシリーズ第25作「寅次郎ハイビスカスの花」で沖縄にもやってきた
▼全国に分布する渡り鳥ミサゴの英名を冠した厄介者もいる。言わずと知れたオスプレイだ。半年前の大事故を忘れたか。伊江島に続き、奄美空港にも緊急着陸した。その後は行方知れず。「運用上の秘密」だとか
▼旅先から戻り、葛飾柴又で悶着(もんちゃく)を起こしても寅さんは憎めない男。妹のさくらは兄の帰宅を待っている。トラブル続きのオスプレイの帰還を待ち望む県民はいまい。そろそろ米本国に引き揚げてはどうか。