<金口木舌>深刻な飲酒実態


この記事を書いた人 琉球新報社

 連日の大雨で、湿気と暑さが体にこたえるが「こんな日はきっと、ビールがうまい」と思う。と言っても結局、梅雨が明けても真冬でも、お酒を楽しんでいる

▼酒はたしなむ程度なら人生を豊かにするが、度を過ぎると大きな問題につながる。自分の健康だけではない。緊急を要しないアルコール関連疾患の患者の受診が、救急救命業務を圧迫している(10日付25、31面)
▼県立南部医療センター・子ども医療センターで、2016年度の1年間に、酩酊(めいてい)状態の受診者が159人、延べ392回受診していた。医師が、酩酊者から暴力を受ける事例も複数回ある
▼救命のために一刻を争う現場で、酩酊者の対応に人と時間を割かれる。同センターでは警備員を増やして対応しているが、酩酊者が1年に複数回受診する例も多く、根本的な解決には程遠い
▼一方、救急外来に来る酩酊者の抱える問題も大きい。30代、40代の若い世代での肝硬変が目立ち、複数回受診する者は、アルコール依存症の疑いが強くなるという。依存症は、家族を巻き込む病気だと言われている
▼飲酒に寛容な沖縄だが、事態はかなり深刻だ。早期発見の体制づくりや関係機関の連携、啓蒙活動など課題は山積している。依存症は回復する病気で、専門の医療機関もある。飲酒を大目に見る優しさを、命を救う取り組みに向けていこう。