<金口木舌>事実は伝わる


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 「カンポウシャゲキがね」-。幼い頃、沖縄戦を体験した家族や先生から話を聞く機会があった。言葉の意味も知らなかったが、暗く恐ろしいイメージは心に刻まれた

▼戦後72年がたち体験者が減る中、沖縄戦の継承が課題となっている。伝える難しさはもちろんのこと、平和教育への無理解や“圧力”もある。沖縄戦の授業を記事で紹介した際、ネット上で取り組みへの中傷の書き込みを目にしたこともある
▼別の機会に「命の尊さを伝えたい」という園長の姿勢に共感し、保育園の平和学習を取材した。園児がヘルメットをかぶり、ガマ(壕)を見学する記事と写真を見た人から園に「危ない。園児がかわいそう」との電話があったという
▼果たして「かわいそう」なのだろうか。くすぬち平和文化館(沖縄市)で読み聞かせを続ける真栄城栄子さんは「大切なのは、残酷でも事実を伝えること」と強調する(9日付12面)
▼7歳の子の沖縄戦体験を描いた「つるちゃん」の紙芝居を見せ、恐怖感でいっぱいの子どもたちにこう言うそうだ。「大丈夫。最後は親が子を守ってくれる。みんなが平和に生きられるように、大人は頑張るからね」
▼4歳児から「戦争は勝ってもだめ、負けてもだめ」の言葉があったという。きょうは「慰霊の日」。子どもたちの力を信じ、平和をつないでいこう。事実はきっと心に届く。