<金口木舌>言葉に表れる社会のありよう


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 役所への書類で家族構成を記す時に迷うことがある。続き柄で「次男」か「二男」か、または全てを「子」とするべきかと

▼こういう誤用もあるそうだ。長男、長女、次男の構成で男児、女児をごっちゃにして「長男・次女・三男」と記す。主婦ら対象の調査での実例だという。毎日新聞の連載で日本能率協会総合研究所の岩村暢子客員研究員が紹介していた
▼調査に夫や息子を普段の呼び名で通した人も。岩村氏は家族を日常の呼称で説明するのは子どものすることだった、などとして「今の人の自己意識や親族・家族の関係が急変していることを表しているのではないか」と分析した
▼先日、「ほっこり」という表現で読者から意見があった。記事中にあると違和感を受けると。一般記事では基本的に使用していないが、発言を引用する際に使われることがある
▼広がりは限定的かと思っていたら、直木賞受賞作の「蜜蜂と遠雷」の一場面で用いられていた。描写での効果など、作者の狙いがあるのだろう。一般用語として定着するかは、私たちの日常でどのように用いられていくかによる
▼「ほっこり」は、心身がほぐれることを指して使われることが多い。「家族の呼称」の分析をまねると、この種の新しい言葉がもてはやされるのは、それだけ緊張を強いられていると感じる人が多い世の中なのだということだろうか。