<金口木舌>慰霊の日の拍手


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 不思議な光景だった。慰霊の日、平和祈念公園で執り行われた全戦没者追悼式である。翁長雄志知事や遺族連合会の宮城篤正会長が辺野古新基地拒否を明言した途端、拍手が湧いた

▼慰霊の場にはそぐわぬ行為かもしれないが、県民の感情を素直に表明したものと受け止めた。基地負担軽減のため「できることは全て行う」と発言した安倍晋三首相には無反応で臨んだ。会場の外で「帰れ」の声が飛んだが、会場内は昨年のような激しいやじはなかった
▼式典の秩序を乱さぬよう礼儀を重んじたのか、やじを飛ばせぬほど絶望しているのか。当方の頭には「しみとーけー」というしまくとぅばが浮かんだ。やらせておけ、だ。空疎な言葉には反応の術(すべ)がない
▼今年の全戦没者追悼式ほど政府と沖縄の対立を見せつけられたことはない。出席した閣僚はどう思っただろうか。厳しい県民感情を肌で感じたならば、せめてもの救い
▼それにしても、沖縄はいつまで慰霊の日に異議申し立てをしなければならないのだろう。本来は亡き父母やきょうだいを偲(しの)び、静かに平和を祈る日でありたい。それを許さぬ理不尽を沖縄に強いているのは誰か
▼この数日、テレビやラジオで「屋嘉節」や「艦砲ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」を聴き、沖縄戦犠牲者は今の沖縄に何を求めているかを考える。答えを探しに、魂魄の塔や平和の礎を再び訪ねたい。