<金口木舌>誰もが ”わけあり”


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 世の「わけあり人材」よ胸を張れ。わがもの顔で仕事をせよ-。中日新聞記者の三浦耕喜さんは「社会全体で長時間労働撲滅を」という記事で呼び掛けた

▼三浦さんは以前、過労からうつ病を発症し、5カ月休職した。その後、両親の介護に当たり、自身も難病のパーキンソン病を発症する。その経緯を著書「わけあり記者」にまとめた
▼冒頭の記事は続く。「介護、子育て、病気などいろいろな『わけ』があっても、それだからこそ、あなたにしかできない仕事がある」。ふと思った。いつから働く場は、家庭のことをせず、病気もせず、長時間働ける人を基準に動くようになったのか
▼三浦さんは実家近くに転勤し、足腰の弱った父親と認知症の母親を特別養護老人ホームに入居させ、妻や弟とともに介護に当たる。病のため、右手の指1本でパソコンに文字を入力し、記事を書く
▼綱渡りの日々だが「真剣にはなるが、深刻にはならない」「人生の経験値が上がった」と前向きだ。「わけあり人材」は、職場や組織で最も大切な「気付き」をもたらす宝だと言う
▼企業の成長という側面からも、多様な人材の能力を生かす「ダイバーシティー」の推進が求められている。介護や病気に直面する可能性は誰にでもある。社会全体が「誰もがわけあり」という前提で働き方を見直せば、もっと生きやすい世の中になる。