<金口木舌>鉄腕・稲尾とひめゆり


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 プロ野球、西武-ロッテ戦が那覇市で開催された。初戦は雨で三回ノーゲームとなったが、2戦目は延長にもつれる熱戦となり、迫力あふれるプレーがファンをうならせた

▼西武の県内公式戦は前身の西鉄以来56年ぶり。1961年5月の西鉄-東映戦は沖縄初のプロ野球公式戦だった。本紙の関連記事が興味深い。「ネット裏は三ドル」「韓国籍の東映・張本、旅券下りず」(直前に渡航許可)の見出しに米軍統治下の世相が見える
▼当時の紙面をめくると、二つの記事が目に止まった。一つは、沖縄開催に尽力した中沢不二雄パ・リーグ会長が本紙に寄せた「プロ野球沖縄に行く」(61年3月4日付)
▼「寒い土地で2月に練習するより、国際情勢がよくなり沖縄へ自由に渡航できるようになったら、準備し行えば効果は明白だ」。各種スポーツキャンプのメッカ・沖縄の活況を見通していたかのようだ
▼もう一つは、鉄腕・稲尾和久投手ら西鉄7選手がひめゆりの塔など南部戦跡を巡り、手を合わせた記事(同5月21日付)。稲尾投手は「胸が締め付けられる」と語った
▼6月29日付本紙1面は県出身の西武・多和田真三郎投手が力投する写真の隣に、「新基地阻止 8月12日県民大会」の記事がある。沖縄戦から72年、負の遺産に苦悩し続ける状況は、沖縄シリーズの年に42勝を挙げた「神様」の目にどう映るだろうか。