<金口木舌>自衛隊票ってあるの?


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 防衛省の役人に「自衛隊票ってあるんでしょうか」と尋ねたことがある。陸上自衛隊イラク派遣部隊の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久氏が初めて参院選に挑んだ2007年のことだ

▼「そんなものはないよ。あれば自衛隊OBの政治家はもっといるはずだ」と大笑いされた。自衛隊法が選挙権を除く自衛官の政治的活動を禁じていることもあるが「そもそも自衛隊員は政治に関わることを好まない」というのである
▼職務には励むが、政治とは距離を置きたい。上官の言うことは聞くが、支持政党まで決めてもらいたくはない。「だから、自衛官イコール自民党支持というわけでもない」と役人氏は解説してくれた
▼佐藤氏の当選は自衛隊票というよりも「ヒゲの隊長」の知名度のお陰だろうか。10年前の会話を思い出したのは稲田朋美防衛相の「自衛隊としてお願い」という発言を聞いてのこと。現場の自衛官も当惑していよう
▼自衛隊の政治活動を厳しく制限しているのは、軍部の暴走で国民を戦争に追いやった戦前の反省からだ。平成生まれの若い自衛官は知らなくとも、防衛相が知らないのでは困る。それこそ資質が問われる
▼都議選の結果が出た。都民は「安倍一強」におきゅうを据(す)えたといえよう。政治の私物化がはびこる政権への怒りである。稲田防衛相も進退窮まったか。自衛隊は自民党の手駒ではない。