<金口木舌>船乗りの”卵”奮闘


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 「身近にあるものの100%近くが船で運ばれている」という事実は、意外と知られていないのではないか。島国日本、離島県の沖縄。船による輸送は生活を支える上で欠かせない

▼沖縄水産高校の実習船「海邦丸5世」での航海実習が行われている。生徒47人が6月9日に糸満漁港を出港した。オーストラリアのケアンズに寄港して40日間、航海技術やマグロ漁を学ぶ
▼本紙教育面で、生徒による実習報告「船乗りの卵日誌」を掲載している。初日、イルカの群れに出合った。実習だけでなく、バーベキューを楽しんだり南十字星を眺めたりと、充実した毎日のようだ
▼深夜の当直もあれば、舵(かじ)を操ったり見張りをしたりと、4時間立ちっ放しでの作業もあるという。厳しい自然の中で協力して安全な航海を支える。真剣勝負の経験を経て、日々成長する
▼一方、船員不足が深刻だ。外航の日本人船員は、最も多かった1974年の約5万7千人から、2010年には約2300人まで減少しており、国としても船員の養成・確保に取り組んでいる
▼沖縄水産専攻科の就職率は、12年連続100%。船員への定着率の高さは、全国の水産高校専攻科の中でもトップレベルだという。「船乗りの卵日誌」には「力を合わせ」「頑張る」と前向きな言葉が並ぶ。太平洋を学びやとして、たくましい人材が育っている。