<金口木舌>那覇市政の「一汁一菜」


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 テレビでおなじみの料理研究家、土井善晴さんの著書「一汁一菜でよいという提案」を読んだ。家庭料理の「一汁三菜」に疑問を呈し、ご飯と具だくさんのみそ汁、漬物が基本の食事スタイルを勧める

▼忙しくて、料理を作るのが大変な人向けの提案だ。「必要以上に味を気にして、喜んだり、悲しんだりしなくてもいい」という人気料理研究家の言葉には驚く。料理苦手の当方も、具だくさんのみそ汁ならできそうだ
▼料理本というより、生活提案本としても読める。著者も「一汁一菜」は思想であり、美学であり、生き方だと説く。せわしさの中でおろそかになりがちな暮らしの基本を再確認した次第
▼思い出すのが1982年の流行語「おいしい生活」である。西武百貨店が発したこの言葉はバブル期に向かう日本社会の空気をまとっているが、衣食住を超えた生活の豊かさを考える上で、ヒントを与えてくれる
▼那覇市議選が終わり、定員40人の顔ぶれが出そろった。公約や政策を見直してみるとおいしそうな素材が並んでいる。でも、選挙のたびにそうなのだから、市民の生活は絶品の味になっていいはずだ。実際はどうか
▼豪華なフルメニューも結構だが、見かけ倒しでは困る。議員諸氏も市政の「一汁一菜」を突き詰めてはどうか。今後4年間、議場という台所でしっかり腕をふるってもらいたい。