<金口木舌>チムグリサンの心


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 飯時を逃すと、大正生まれの祖母に「ひもじくないか」と聞かれることがあった。戦前や戦後、食で困った経験がある人が「ひもじい」と言うと、厳しい空腹が心底伝わるような気がした

▼福祉関係者から「夏休みを嫌がる子がいる」と聞いた。家でご飯があまり出ず、給食に頼っているからだという。困窮支援は活発になったが、支援から漏れる子どもがいる。困窮を隠して支援を求めない子もいるという
▼沖縄市社会福祉協議会のフードバンクには、市民が自治会を通じ米や缶詰などを持ち寄る。NPOのセカンドハーベストとの連携で始めて10年目。製造業者からの持ち込み中心ではなく、地域が主体の活動は全国でも珍しかった
▼市社協の金城和彦事務局長はフードバンクの意外な成果として「食べ物を必要としている人を見付けることにつながった」と話す。活動が知られ、必要とする人につながる例が増えた
▼「寄付」ではなく「おすそ分け」が活動の肝。自分も満たされているわけではないが、分けなければ心が痛むという「チムグリサン」の精神だ。沖縄福祉の母・島マスさんが、大切にしたい沖縄の心のありようとして挙げた
▼「夏休み」と聞くと心待ちではなく、ひもじさに気を煩わせる子どもがいる。小さなことであっても何かできることがある。それを忘れずにいることが、子どもたちの笑顔につながる。