<金口木舌>先人の息づかい感じる


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 「知りたい」という熱気に圧倒された。8日、県公文書館で行われたシンポジウム「琉球王国の外交文書-歴代宝案への誘い」には250人が詰め掛けた。歴史への関心だけでなく、自己のルーツを確認したいという欲求の表れにも見えた

▼「歴代宝案」は、1424年から1867年までの444年間にわたる琉球王府の外交文書を王府自ら編集したもの。沖縄戦で焼失したが、県教育委員会が25年かけて校訂本15冊を復元した
▼大交易時代の琉球王国の姿を知る上で第一級の史料だ。国王や大臣だけでなく、一般の人々についてのエピソードが詰まっているという点でも貴重である
▼例えば中国から琉球への通達に、中国に漂着した泊村の4人の記録がある。八重山の年貢を本島に運ぶ際に遭難したことや、真鶴という女性が同乗しており、彼女が実家に帰って療養する予定だったことまで記されている
▼一方、知恵を使って中国との関係を維持した琉球の姿も浮かび上がる。朝貢を断られても「琉球は地の果ての国で、薬も手に入らない」などとなりふり構わず交渉した。アジア各国との貿易では、そうして得た中国の後ろ盾を利用した
▼研究が進めば、当時の貿易の実態だけでなく庶民の暮らしの様子も分かるかもしれない。大国としたたかに渡り合う先人の息づかいに触れることができると思うと、胸が躍る。