<金口木舌>容姿を褒めるのはマナー違反


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 「そのネクタイすてきですね」「あなたの顔立ちすてきですね」-。同じ褒め言葉でも、後者の方は違和感がある。服のセンスを褒められるのはうれしいが、容姿はなぜか素直に喜べない

▼相手との関係や状況にもよるが、後者は「個人の資質ではなく、見た目だけで人を判断しているのではないか」と疑心暗鬼になる。一歩間違えれば、セクハラにもなりかねない
▼それを国際舞台でやってしまったのが、稲田朋美防衛相。6月にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、同席したオーストラリアとフランスの国防大臣に対し「私たち3人には共通点がある。みんな女性で同世代。そして全員がグッドルッキング(美しい)!」と、演説の中で「冗談」を言った
▼国際社会でこれが冗談と受け止められるかどうか、微妙である。同席していた豪仏の両大臣も「心なしかこわばった表情に見えた」と全国紙は報じている
▼性別、年齢、容姿で今のポジションが与えられたのではなく、自身の能力が認められて大臣職に就いているはずだ。職務と関係ない容姿を持ち出すのは、相手も自分もおとしめることになる
▼8月には内閣改造がある。組閣のたびに女性閣僚の人数が注目されるが、本来なら質こそ問われなければならない。かつて組閣でやゆされた、安倍晋三首相の「お友だち内閣」は勘弁願いたい。