<金口木舌>絵日記と台風


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 吉田拓郎さんの代表曲「夏休み」は懐かしい人や生き物を折り込み、戻っては来ない少年期を振り返る。「姉さん先生」や「たんぼの蛙(かえる)」「畑のとんぼ」のそれぞれに愛惜がこもる

▼歌詞にある「絵日記つけてた夏休み」は誰しも思い出があろう。小学校低学年時の夏休みには決まって絵日記の宿題が出る。絵日記を付けるためにピクニックを親にねだる子は今もいるはずだ
▼絵日記に欠かせないのは天気である。夏休みの終盤、まとめて絵日記を描こうにも天気を忘れてしまい、困り果てた苦い記憶がある人もいよう。当方もその一人。それでも台風の襲来を忘れることはなかった
▼台風のことを絵日記につづったのは小学1年の時だった。家に閉じこもり、窓から外を見つめる自分と庭でカタカタと音を立てて揺れる植木鉢を描いた。ろうそくの明かりの下で非常食の缶詰を食べたのも忘れ難い
▼過去10年、3~11個の台風が毎年沖縄地方に接近しているという。16日付本紙「りゅうちゃんのそこ詳しく!」に教えられた。近年、台風接近が減ったと感じていたが勘違いのようだ。今年はどうだろうか
▼「夏休み」は「ひまわり 夕立 せみの声」と結ぶ。あさってから公立学校で夏休みが始まる。楽しい思い出に加え、台風の怖さも絵日記に描くことにもなろう。これも沖縄の子には欠かせない夏休みの思い出だ。