<金口木舌>偽ニュースとの攻防


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 大勢の人々の真ん中で、おんどりは重い梁(はり)を持ち上げ、羽根のように軽々と運んだ。それを見た娘は叫ぶ。「皆さん、運んでいるのはわらだって分からないの」。途端に魔力は消え、真実を見た人々は魔法使いを追い払う。娘は四つ葉のクローバーを見つけて賢くなっていた

▼グリム童話の「梁の木」である。その魔術のような現象が世界中で横行している。偽ニュースだ。広告収入目当ての悪質なものもあり、グーグルなどIT大手は対策に乗り出した
▼偽ニュースは日本でも広がっている。「忖度(そんたく)が小中学校の正式科目に」など、明らかにうそと分かる内容もあれば、ある食べ物に「放射線から体を守る効果がある」など一見、信じてしまいそうなものもある
▼偽ニュースの問題を世界に認知させた立役者トランプ氏は大統領就任から今日でちょうど半年。いまだに続く暴言や失言の数々が世界中から悪評を買っている
▼おかげで情報の真偽を見抜く試みが世界でブームだ。日本でも先月、ファクトチェック団体が発足した。今月上旬には、同様の団体の国際会議がスペインであり、各国の報道関係者らが試みを報告した
▼「梁の木」の娘は魔法使いの仕返しに遭う。現実社会でも偽情報との攻防は続くだろう。“魔術”を見抜く“四つ葉のクローバー”を一人一人が身に付けられるかが、大きな決め手だ。