<金口木舌>紙芝居に込める地域への思い


この記事を書いた人 琉球新報社

 各小中学校で行われている「読み聞かせ」。浦添市立当山小学校で、ユニークな取り組みを見た。読み手は「西原大綱引きの会」の面々。地元に約400年続く伝統行事を紙芝居に仕立てた

▼メンバー5人がオリジナルの衣装を身にまとい、鉦(かね)を打ち鳴らし、声を掛け合う。綱を引き合う迫力ある場面だけでなく、歴史や特徴などを丁寧に伝える内容が印象に残った
▼今年2月に当山幼稚園で初披露して以降、当山小学校、浦西中学校に出向き、夏休みを前に全学年を対象にした実演を終えた。普段は読み手役の父母らにも語り掛ける場面があり、多くの住民が身近にある宝物を再確認した
▼地域を知ってほしいと、浦添市のてだこ市民大学の卒業生が中心となり、会を立ち上げた。住民らも加わって活動し、昨年2月に創作紙芝居を発案。年配者への聞き取りや取材を重ねた
▼面白さだけではなく、歴史を残し伝えることを心掛けたのだろう。紙芝居の台本は完成までに十数回書き直したという。地域へのこだわりは絵一枚一枚にも見えた。台座を含め、全て住民らの手作りだ
▼紙芝居は、住民にとっても歴史や伝統と向き合う機会となった。読み聞かせのたびに反響は広がった。8月の綱引き本番では、子どもたちが綱の運搬や準備など、祭りに触れる機会を設けた。紙芝居を通し、地域の魅力を知る輪は確実に広がっている。