<金口木舌>島の空気感


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 大ヒットした映画「ナビィの恋」のエンディングは、主人公や島の人々が集い、笑顔の輪が広がる。その場面を見た時、沖縄らしさを的確に表現していることに感動した

▼大団円に見えるが、物語を振り返ると全てが解決したわけではない。不安や寂しさがある一方で、おじいの全てを包み込むような優しさがあり、新たな幸せのスタートもある。さまざまな人が同じ場所で生きている
▼芥川賞作家で、お笑い芸人の又吉直樹さんの講演を聴いた。父親が名護市出身、母親が奄美の加計呂麻島出身の又吉さんは、父母の実家で過ごすことも多かったそう。沖縄や奄美独特の「島の力」や「空気感」があると話した
▼耳の遠い祖母と、うちなーぐちの分からない自分の間で、なぜか会話が成立している。奄美で親戚が集まった時、三線を弾くたび赤ちゃんが泣いた。みんなが言う。「亡くなったおじいちゃんが歌っているね」
▼理詰めで説明できないことが存在し、見えないものを共有している感覚がある。又吉さんは「言葉以外の何かが伝わる瞬間が面白い」と話し「人間の境界が溶け合っている感じ」とも表現した
▼ゆったりしてばかりでは、進まないこともある。ただ、ちょっとした発言で“炎上”したり、ヘイトスピーチがあったりと、ぎすぎすした雰囲気のある昨今、島の空気感を見直すのもいい。