<金口木舌>たかが姓、されど姓


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 「結婚後も仕事上は旧姓を使用している」と知人に話したら、不思議そうな顔をされた。幼い頃親の離婚と再婚で2度姓が変わった彼女は、自身の結婚で姓の変更は3度目となった

▼「これだけ姓が変わると旧姓にあまり愛着はない」と笑った。国際結婚をした友人は、ミドルネームが旧姓となっている。公的証明書はパートナーの名字、自分の旧姓と両方併記されている
▼別の友人は姓を変えたくないため、パートナーと事実婚をしている。相手も自分も姓を変えたくない場合、今の日本では婚姻届を出さずに暮らす事実婚となる
▼事実婚の弊害は税金の配偶者控除が受けらない、保険会社によっては生命保険の受取人になれない-などがある。一部の携帯電話会社は、事実婚でも「家族割引」を認めている
▼一方で、LGBT(性的少数者)など同性のカップルを結婚相当と認めるパートナーシップ登録制度を那覇市は導入している。だが、事実婚には同様の制度はない。事実婚の友人は「LGBTと同じように、社会的に認められてほしい」と望む
▼総務省は来年度以降、希望すれば住民票などへの旧姓併記を始める。旧姓を使用する理由は「仕事上、結婚後も同一人物と認識され煩わしさがない」「自尊心の維持」など人それぞれ。多様性や選択肢が多い社会は生きやすさにつながる。たかが姓、されど姓である。