<金口木舌>「温度差」の正体


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 1945年6月21日。「六時半、空襲警報発令。二時より工場長から沖縄総決戦の話あり」。太平洋戦争中、14~16歳の少年が書き残した記録がある

▼寺井俊一さんの日記は「未来日記」と題し、1月に出版された。臨場感のある記録からは、戦時下で揺れる若者の生と死への思いや覚悟が浮かぶ。今の若者の無関心を刺激し、歴史の教訓を未来に生かしてもらうことが出版の狙いだ
▼本土では、辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意に対し、支持と嫌悪という両極の反応がある。連綿と続く沖縄の苦難の歴史に位置付けるか、中国や北朝鮮の「脅威」の視点で見るかで分かれる
▼圧倒的多数は、その間にいる無関心層だ。「沖縄は基地がないと食えない」「基地反対市民は日当をもらっている」などの誤解やデマは根強い。そんな沖縄と本土の認識の溝は「温度差」と言われてきた
▼「未来日記」は2人のノーベル平和賞受賞者の言葉を引く。マザー・テレサの「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ」。作家エリ・ヴィーゼルの「平和の反対は、平和と戦争に対する無関心である。無関心が悪なのである」
▼「温度差」を生む主な要因は無関心だ。薩摩侵攻、琉球併合、沖縄戦、米国統治など、沖縄が歩んだ苦難の歴史の延長に基地問題がある。その爪痕は多くの教訓を指し示す。歴史から学ぶことの重みを共有したい。