<金口木舌>旧優生保護法


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 ものすごく暗い気持ちになった。日弁連によると旧優生保護法に基づき、障がいを理由に不妊手術を施された人が全国に約2万5千人、うち1万6500人は強制だったとされる。最年少は9歳。胸が締め付けられる

▼国は「当時は適法だった」として補償や謝罪をしていない。判明した人数は氷山の一角だ。今回、宮城県の女性が国を提訴しなければ、闇に埋もれていた人権問題だろう
▼「不良な子孫の出生防止」が旧法の背景にあった。旧法が障がい者への偏見を助長してきた側面も否定できない。1996年に改正されたとはいえ、一昨年の相模原殺傷事件を考えると「優生思想」に基づく障がい者排除の考え方は今もある
▼米国の幼児番組「セサミストリート」では、ジュリアという自閉症の女の子が登場する。「自閉症への理解が深まってほしい」との思いが制作者にある
▼考えてみれば、テレビに出てくる人は多くが健常者だ。私たちは身近にいる障がい者にもっと気付く必要がある。幼児番組でジュリアが登場する意義は大きい
▼ダウン症などの疑いがあるかどうかを調べる新出生前診断について、日本産科婦人科学会は実施施設を拡大する方針だ。診断ニーズの高まりが背景にある。染色体異常の「陽性」と診断された妊婦の9割が中絶を選択している。中絶を選択しなくてもいい、共生社会が求められている。