<金口木舌>挫折も偉業へのステップ


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 まさかの失態だ。WBCフライ級王者の比嘉大吾選手が、3度目の防衛戦で日本人王者として前代未聞の体重超過。50・8キロの制限体重をパスできずに失格となり、王座を剥奪された

▼プロ転向からわずか3年目で頂点に。凱旋試合で沖縄中を沸かせた。日本記録と並ぶ15試合連続KO勝利など順調に見えたボクシング人生に何があったのか
▼ハードパンチに磨きをかけるための高強度トレーニングで筋量が増し、さらに減量苦に陥ったかもしれない。試合間隔やコンディショニング、減量のサポートなどは適切だったのか。JBCの厳罰も予想されるが、陣営には反省だけでなく徹底した検証が求められる
▼前に出て打ち合い、強打のコンビネーションで相手を仕留める。アジア人ボクサーとして米国で最も成功したフィリピンの英雄、マニー・パッキャオ選手を彷彿(ほうふつ)とさせる
▼パッキャオ選手にも挫折があった。1999年、比嘉と同じWBCフライ級王者として臨んだ防衛戦で体重超過し、王座を剥奪されたあげく、KO負け。だが、そこから復活し、6階級制覇の偉業を成し遂げた
▼野球に熱中した小中時代から自主練に打ち込み、けがも乗り越えてきた。「大吾ならまた世界王者になれる」。出身地、浦添市の同級生らは言い切る。沖縄の英雄として不屈の精神で立ち上がり、偉業を見せてくれるはずだ。