<金口木舌>痛みを繰り返させない

 「私は動物以下か」。ハンセン病証言者の女性の叫びだ。名護市済井出の沖縄愛楽園交流会館に常設展示されている

▼1945年の沖縄戦前、日本軍は女性らを愛楽園に強制入所させた。トラックの荷台に乗せ、見せ物のように雨の中運んだ。尊厳を踏みにじられ、女性は怒りの声を上げた。当事者らへの差別は戦後も続いた
▼交流会館では、土を焼いて作る陶彫と写真による企画展「沖縄の傷痕」も8月まで開催する。写真家の鈴木幹雄さんが40年前に撮影した作品は園での暮らしの瞬間を切り取った。三線を弾き、酒を酌み交わす。人間の営みを確かに伝える
▼陶芸美術家の伊志嶺達雄さんの陶彫作品は、強制堕胎で生まれることを許されなかった胎児などを表した。「ここでしか生きられなかった人、ここでしか生きられない人たちがまだいることを知ってほしい」。作品に込めた思いだ
▼名前、家族、命、自由、未来…。患者絶滅を掲げたらい予防法は約90年続き、社会は取り返しのつかないものを奪った。96年の予防法廃止から22年経過した今も、回復者の大半は差別を恐れ、口外できない
▼ハンセン病市民学会は5月、全国規模の集会を那覇市の男女共同参画センターてぃるると愛楽園で開催し、県民の参加を広く募る。過ちを繰り返さず、痛みを繰り返させない。その実現に向け、無関心を打ち破る一人一人の行動力が試される。



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