<金口木舌>京都から江戸に行くことや物が出・・・


この記事を書いた人 琉球新報社

 京都から江戸に行くことや物が出回ることを「下る」と言った。上方の上等な品は下るが、そうでない品は「下らない」。転じて「意味のない」「取るに足らない」物事を指すようになったとの説がある

▼今日は落語の日。くだらないと言われそうだが、6(ロク)と5(ゴ)の語呂合わせだ。東京の寄席では毎年6月の第1月曜を寄席の日とし、木戸銭の割引などを行っている
▼「瀬を早み」の百人一首を題材にした落語「崇徳院(すとくいん)」は町人の恋を描く。下の句の「われても末に会わんとぞ思ふ」をひねった「買わんとぞ思う」のサゲだけ聞くと、くだらないと思う向きもあろう
▼恋の病の滑稽さで聞く者を引き付ける。人助けに動きだす人の侠気(きょうき)に礼金への目算も絡んで物語が一気に動く。職人や奉公人らの生活の匂い、息遣いが伝わってくるようだ
▼沖縄では聞く機会が少ない中、宜野湾市は古典演目「厩(うまや)火事」をアレンジした行事を開いた。男女共同参画を考えるイベントだ。長らく愛されてきた演目の力だろう。観客を引き込んだ
▼うちなー噺家(はなしか)の志ぃさーこと、藤木勇人さんは創作や翻案による沖縄落語の新境地に挑み続けている。何気ない、取るに足らない日常の中に物語はあると話芸は教えてくれる。お笑いを含め、沖縄の話芸の発展に期待したい。真面目に、地道に生きる人々をたたえ、励ましてもくれる。